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剰余金を利用して増配する、あるいは自社株買いを行なうという手段をとることに対する姿勢である。
いたずらに企業帝国の拡大を志す、というのは論外であろう。
一九八三年、同社は剰余金を有利に運用することができなかったので、自社株買いによって株主に還元することを決めた。
Sは「われわれが投資対象に要求する基準が高過ぎるか、あるいは、われわれの予定した買収価格が低過ぎたということもあって」と説明している。
一九八三年以来、GEICOは、自社株(株式分割後の)三OOO万株を買い、発行済株式数の三O%を減らした。
自社株買いに加えて、GEICOは増配もいっぱいに行なっている。
一九八O年の分割調整後の配当0・0九ドルが、一九九二年には0・六0ドルと増加。
その増加率は年平均二一%になっている。
一九八二年以降、GEICOのROE(株主資本利益率)は平均一二・二%で、業界平均の優に二倍の高率を示している。
それが、一九九0年代初期になると下降線をたどってきた。
資本の伸びが利益の伸びを上回ったからである。
これからもわかるように、増配や自社株買いを行なうことの意義の一部は、資本ベースを減らしてROEを高めることにある。
近年の下げにもかかわらず、GEICOのROEは、常に業界平均を上回っている。
一九八O年は三0・八%で、業界平均の約二倍。
一九八四年と八八年には下げたが、それでも業界平均より上であった。
一九九二年には一四・O%まで下がったが、その原因の大きな部分は、ハリケーンを含む天災だった。
保険会社の収益性を計る方法はいくつかあるが、税引前の売上利益率はそのなかでも最良のものの一O年以上にわたって、GEICOの平均は同業他社に比較して最も安定していた。
GEICOは、経費のすべてについて、きめこまかい配慮をしてきだし、保険金請求の処理に関連した経費については、とくに厳しくしてきでいる。
GEICO全社の経費合計は、収入保険料の一五%(平均)で、これは業界平均の半分の水準である。
この低率は、GEICOが代理屈を使わないことからきている。
この経費に引き受け損失を加えた総費用の割合も業界平均よりはるかによく(九七・一%)、一九七七年から九二年の聞で、それより悪かったのは七七年の一度だけである。
GEICOが引き受け損失を出したのは八五年と九二年の二度だけで、九二年は例年にない数の天災に見舞われたことによるもの。
その他の、大きな暴風雨の被害がなければ、比率は九三・八%という低率であったはずだ。
一つである。
PがGEICOを買い始めたとき、同社は破産に瀕していた。
しかし彼は、たとえマイナス資産の状態であっても、保険業の既得権などを考慮すれば相当な価値がある、と言っていた。
しかし、一九七六年にもGEICOは利益ゼロで、Jが提唱した、企業の価値の数学的測定を適用できない状態であった。
Wは、企業の価値は、その企業のライフサイクルの全過程で生み出されるキャッシュフローを推定し、これを妥当なレートで現在値に還元して得られるとした。
GEICOの将来のキャッシュフローは読める状況になかったが、Pは、同社が生き延びて、将来は利益を上げると確信していた。
しかし、それがいつ頃からで、いくらくらいかということは、まだまったく賭けの段階でしかなかった。
一九八O年には、PはGEICOの株式の三分の一を保有していた(買値は総計で四七OO万ドル)。
同年のGEICOの時価総額は二億九六OO万ドルだったが、そのときでさえPは、この株の保有には十分な安全余裕率があると推計していた。
その年、同社は七億O五OO万ドルの収入を得て、六OOO万ドルの利益を上げた。
Pの評価分としては、その三分の一の二OOO万ドルになる。
Pは、言っている。
「第一級の業態と明るい展望を持ち、二OOO万ドルの利益を期待できる企業、そうした企業を買収するとしたなら、少なくとも二億ドルは払わなければならない」Wの理論によれば、この二億ドルという推計は現実味がある。
GEICOがこの六OOO万ドルの利益を追加の資本投資なしに維持していくと仮定する。
当時の三O年物米国債の利率は一二%で、それを現在値に還元すると五億ドル。
一九八O年のGEICOの時価総額のほとんど二倍である。
もし同社が収益力を実質で年率二%、あるいはインフレ率前の名目一五%だけ伸ばすことができたとしたら、現在値は六億六六OO万ドルと計算できるから、Pの持分は二億二二OO万ドルということになる。
これを言い換えれば、一九八O年のGEICOの時価総額は、同社の収益力の現在値の半値以下だった、ということになろう。
一九八O年の二億九六OO万ドルから九二年の四六億ドルまで、GEICOの時価総額は四三億ドルも増加している。
この一三年間に同社は一七億ドルの利益を上げ、二億八OOO万ドルを配当し、一四億ドルを再投資目的で留保した。
したがって、留保利益の一ドルについて、株主のために三・一二ドルの価値をつくり出してきたことになる。
この成果は、同社の優秀な経営力と販売力、そして株主の資金を高率に運用する能力によるものであった。
GEICOの優良性のさらなる証明としては、一九八O年の同社による一ドルの投資は、配当を除いても、一九九二年には二七ドル八九セントになっている。
実に、複利計算で年率二九・二%。
業界平均は八・九%で、S&P五OO種と比べてもはるかに高率である。
一九八六年にPに代わって会長兼CEOに就任したBが、Pとともに新しい保険会社を創業するため、予定より一年早く引退すると発表した。
GEICOから保険会社二社を買収する予定とのことだった。
GEICOは、TとSがともにCEOに就任、Nが保険業、Sが資産運用をそれぞれ分担すると発表した。
GEICOが特色とする低コスト、代理屈抜きの保険の販売は堅く根づいている。
また、経費を徹底的に節減するという思想は、企業文化のなかに定着した。
Sの傑出した運用成果の記録は、同社の投資ポートフォリオがよい状態にあることと、同社の株主対策が高い評価を受けてきたことを思い起こさせる。
これらを総合した実力は、F誌の認めるところとなり、米国産業の年次報告。
のなかで「GEICOは一九九0年代を代表する保険会社」と称賛されたのであった。
Pが以前と同様に後押しするのはもちろんであろう。
PによるGEICO株の保有は着実に増えて、今日では四八%の大株主である。
C/ABC(CC/ABC)は、資産二O億ドルを擁するメディア・通信企業の大手で、三大ネットワークの一つである。
TV、ラジオの放送局および系列ネットワークを持ち、ケーブル放送の番組用ビデオの制作を行なっている。
さらに、新聞、ショッピング・ガイド、各種業界誌および特定読者向け雑誌、定期刊行物、書籍等の出版を手がけている。
傘下のABCテレビネットワークは二二八の放送局と提携、全米の家庭の九九・九%に電波を届けている。
またABCラジオネットワークは、三二七五の提携局を持つ。
CC/ABCは、ネットワークに流す番組の制作費、あるいは放送権料を支払う。
また提携のTV、ラジオ局に対して、番組とコマーシャルの放送料の支払いを行なう。
一方、収入は、広告主に対して販売するコマーシャル時間の代金である。
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